当研究所での「コラーゲン」の抽出が実現するより以前には、「コラーゲン」というもの自体まだ一般になじみがありませんでした。いっぽう研究者の間では“動物の体内につねに多く存在し重要な役割を担っているタンパク質”でありながら、“水に溶けないゆえに抽出が困難なタンパク質”として認識されていました。当研究所で初めて抽出された当時から、火傷の被覆剤など医療分野への活用が注目されるなど、ニッピが抽出した「コラーゲン」の生体への高い適合性が評価されていました。
今日、化粧品で「コラーゲン」が用いられるようになったのは、このニッピの抽出技術によるものです。世界初のコラーゲン配合の化粧品は、ニッピの「コラーゲン」を用い、米国の大手化粧品会社から発売されました。
ニッピの「コラーゲン」製品の先進性と独自性を支えているのがバイオマトリックス研究所です。バイオマトリックス研究所の研究対象は、すべての生物に存在する細胞内外のマトリックス(基質)です。とくに、「コラーゲン」を中心とした細胞外マトリックスの生化学・細胞生物学・生体工学的な研究を行っています。世界に先駆けて「コラーゲン」の研究・開発に取り組み、1963年に世界で初めて「コラーゲン」の抽出に成功し特許を取得して以来、世界の「コラーゲン」研究と応用製品の開発をリードしています。
再生医療とは、人工的に培養した細胞や組織を用いて、病気やけがなどによって失われた臓器や組織を修復・再生する医療です。この分野で「コラーゲン」が注目されるようになったのは、臓器の構造が理由です。肌が真皮と表皮に分かれているように、体内の臓器は、真皮のコラーゲンの上に、上皮(肌でいえば表皮にあたる)をつくることで、成り立っています。この上皮にある細胞が異なることで、胃や腸などの働きも異なります。このような構造のために、再生医療の研究には「コラーゲン」が欠かせない素材として用いられています。
ニッピの再生医療への取組みは、今から約50年以上前にすでに始まっていました。50余年前、「コラーゲン」を水に溶かしだす技術で特許を取得した西原富雄博士は、特許取得の4年後、すでに「コラーゲン」を用いた人工血管の研究に着手していました。西原博士は、この人工血管を医療用に製品化させるために渡米。しかしながら当時は、「コラーゲン」自体ではなく、その周辺の技術レベルがおよばなかったために、製品化までにはいたりませんでした。現在では、周辺の技術も発達したことにより、あらためて「コラーゲン」が再生医療の分野で注目を集めるようになっています。
ここでいう人工血管とは、コラーゲンを用いてパイプ状の筒をつくり、その筒を血管の代わりに人体に埋め込みます。すると体内にて、新陳代謝による分解と生成が行なわれ、この人工血管が、自分の体内臓器の一部として完全に定着します。